技能実習の現場から(technical intern trainee)

技能実習生が来た!

おはようございます。おりかなです。

技能実習に限らず、これからベトナム人を職場に迎える人の不安を減じ、すでに迎え入れている人には、より彼等を理解しようとする上で助けとなるように。

はじめに (技能実習生の予想と現実)

一昨年の春に、私の働いている事業所では技能実習生を受け入れました。しかも私が指導担当です。それまでベトナム料理は食べたことがあるけどベトナム人と仕事をしたことはない。どのような人たちが来るのか期待もありましたが不安でした。受け入れに先だって、職員を対象としたベトナムに関する簡単な講習会を私がすることになり、ベトナムについて調べました。実際に働き出してしまえば、彼等は真面目で頭もよく働き者でした。入所者も、細かいニュアンスが伝わらなかったり、中には外国人であることを気にする人もいましたが、概ね好評です。記録や文書作成で多少のサポートは必要ですが、なまじっかな日本人のスタッフよりもよほど仕事ができます。今では彼等がいずれ自分の国に帰ってしまうことが残念でなりません。

今、日本ではベトナムから来た人々と接する機会が増えています。外国人留学生の割合で言っても、ベトナム人が中国人を抜いてトップです。

しかし、多くの日本人は、ベトナム人に対して良いイメージは持っていないでしょう。ここ数年で在日ベトナム人が起こす犯罪のニュースを頻繁に目にするようになりました。

ベトナムの一般的なイメージと、実際に同じ職場で働くなかで接したベトナム人技能実習生の様子をお話ししていきたいと思います。

ベトナムの一般的なイメージ

他人のものはオレのもの?

国旗をみてもわかるように中国と地理的にも文化的にも近いところがあります。

ベトナムは共産主義の国です。そこからのイメージで、人の物はみんなの物?  的な思考の人々なのかなという不安がありました。

実際にはそんなことはなくて、ちゃんと自分のものと他人のものを分けて考えています。

高齢化社会

ベトナム戦争で成年が著しく減少したベトナムの年齢別の人口分布は少し前までは高齢者になるほど少なくなるピラミッド型でした。しかし、現在すでにベトナムは高齢化社会です。老人に比べて若者、特に子供の数が減少しつつある。そのため、医療介護の事業にとってはこれからのベトナムはビジネスチャンスです。介護施設を作り、帰国した技能実習生を現地で介護スタッフとしての雇用する日本の企業が出てくる、かもしれないですね。

ホーチミンの夜景

地方に行けばまだまだ衛生的にもよくない場所も多く、昔の日本みたいなところもあるようです。例えば、ベトナムではトイレットペーパーをトイレに流さずに、ゴミ箱に集めて処分します。下水道の品質が日本ほどよくないから。日本でも山小屋のトイレ等はそうです。しかしこのホーチミンやハノイの夜景やおしゃれなルーフトップバーはどうでしょう。近い将来、日本とベトナムの立場は逆転するかもしれない。ベトナムもどんどん発展しているから、もう仕事を求めて日本などの外国に出稼ぎにいく必要がなくなるでしょう。

徴兵制

ベトナム人の男子には兵役の義務があります。うちに来ている子の弟も兵役に行っていて、この間除隊して帰って来た、と話していました。まだ20代前半です。銃が扱えるということですね。

多民族国家

ベトナム人の容姿は千差万別です。よくネットに出回っているアオザイを着たグラマーで色白な美人さんの画像は、北部の中国系のベトナム人だと思います。南部の方などではもっと浅黒い肌で目の大きな子たちもいます。その他に少数民族も合わせて100以上の民族がベトナムにはいるのです。

宗教

これはおおむね日本に近いところがあるかもしれません。キリスト教も仏教もありますが、日常生活ではそれほど影響力を持ちません。儒教的な思想が浸透していて、年長者を敬います。ベトナム人が他人の年齢を気にすることについて、なにしろ代名詞が相手との年齢の差で変化するのです。emという代名詞があって、これはmeにもyouにもなりますが、自分が相手よりも年下なら自分をemと言うし、相手の方が年下なら相手をemと呼びます。

フランス文化の影響

ベトナムはかつてフランス領だったことがありフランス語を話せる人も多いようです。かつての台湾に日本語の話せる老人がたくさんいたのと同じですね。バインミーというパン料理やコーヒーを飲む習慣などはフランス領だったときに入ってきた文化です。ちなみにベトナムコーヒーはサンマルクカフェで飲むことができますが、物資不足のために練乳を使ったことがルーツのようです。

中国文化の影響

ベトナムは地理的に近いこともあり、文化的にも中国の影響を受けています。町なかの看板に漢字が使われていたりします。食事のときにお箸を使います。アオザイ(アオヤイとも)は中国服に似ていますし、お正月もテトといって、現在の1/1ではなく、旧正月を盛大にお祝いします。ベトナムの言葉も中国語から多大な影響を受けています。実は現在使われているベトナムの文字(アルファベットに点や波線などが付いたあれ)は近代になって考案されたもので、それ以前には独自の文字はなかったと言われています。そして特に地名や人名に顕著ですが、ベトナムの言葉は実は漢字の発音から来ているのです。中国語の音のみを使用していたのが原初のベトナム語だったとも言えるでしょう。ベトナム人に多い名前である「グエン」さんは、実は「阮 」なのです。ホー・チ・ミンは胡 志明なのです。漢字をそのまま音読みしたようなベトナム語の言葉が結構あります。

以上がベトナムの一般的なイメージになります。以下は私が実際にベトナム人技能実習生と接してみて感じたことです。

私の出会ったベトナム人たち

人柄

スタッフの中には中国の人もいます。同じ共産主義の国の人たちでも、中国人は自己主張が激しくて、入所者に対する口調や態度も少々強めです。町中を歩いていても、中国人は服装の色のセンスでそれとすぐわかる。あと、大声でしゃべっているのも中国人が多い。

それに比べると、ベトナムの人たちはシャイで優しくて場の雰囲気を読んでくれるようです。年長者を敬います。ただし、納得いかないことにはちゃんと説明を求めてきます。プライドも高いので不当な扱いに対してははっきりと不服を申し立ててきます。そして女の子でもなかなかに気が強い。その辺は私は逆に好感を持ちました。表だって文句を言ってくる日本人のスタッフは少ないですが、この私に面と向かって文句を言ってくる彼等を、逆にスゲーと思って感心しました。彼等は素直なので嬉しいときは笑いますし、嬉しくないときは素直にそれを顔に表します。それはけして反抗的な態度ではなく、ベトナム人の国民性なので、指導する日本人は心に留めておいて欲しい。彼等は日本人のように愛想笑いをしないのです。

アオザイ

日本での普段の生活では彼等はアオザイを着ません。しかしちゃんとトランクの中に入れて持ってきています。今はデザインもいろいろあるようです。上の写真のようなアオザイが正装に当たるようです。未婚の女性はカラフルなアオザイを着て、既婚者は黒などのアオザイを着ます。私も着せてもらったことがありますが、生地が通気性があって着心地の良いものでした。あまり日本では売っていないけど、1着欲しいかなあ。

スマホ命

スマホを手に入れたばかりの中高生のように彼等はいつでもスマホをチェックしています。ベトナムではまだまだスマホは高価なものだと思いますが、それでもほとんどのベトナム人がスマホを持っています。しかし彼等は電話番号は持っていない。日本に来たばかりの彼等はWi-Fiのあるところでしかスマホを使うことができません。しかしある実習生は後にSIMカードを自分で購入してWi-Fiのない場所でもスマホを使用していました。事業所の幹部職員たちはそこまでは把握していないようでしたが。いちど銀座のアップルストアについていったことがありますが、その子は最新のiPhoneを現金一括で購入していました。スゲーッ、と思いました。お金はないけどスマホは必需品。彼等は家にいる時間のほとんどをスマホをみて過ごしているのではないでしょうか。

SNS命

ベトナム人にとってfacebookは重要なコミュニケーションツールです。日本在住のベトナム人たちはfacebookでネットワークを形成し、互いに様々な便宜をはかっています。故郷の家族や友達と連絡を取るのもfacebookですし、商売、物の売り買いや店を探すのもfacebookを使っているようです。恋愛の相手もfacebookで出会ったりするよう。

facebookの友だちが数千人以上いるベトナム人はざらです。そして写真を撮るのも大好きです。どこかに出掛けるたびにたくさん写真を撮ってsnsにアップします。写真を撮りなれているし、撮られ慣れています。彼等のfacebookはお洒落な写真で溢れています。Tiktokをしている子もいます。

お洒落

技能実習生たちの服装を見るとお洒落です。メイクもするし、ファッションをよく研究しているなと感じます。日本人よりもお洒落にお金を使っています。パックや化粧品も大好きだし、着こなしがみんな読者モデルみたいです。ベトナムは暑いので着ることがないはずですが、冬にはロングコートを着てマフラーや帽子をかぶります。それがちゃんと様になっている。しかし、時々ちょっと寒そうな格好で出歩いていたりします。一緒に出掛ける機会があるのですが、それじゃ風邪ひくよってくらい、薄着で出てくる子もいます。なかなか日本の冬の寒さというものがわからないのかな。

辛いもの好き

私の知っている子だけかもしれませんが辛いものが大好きです。唐辛子をそのままバリバリ食べていたことがあります。ベトナム料理はあまり辛くないイメージですが、この子たちが家で自炊するときは辛いのを作るようです。

お風呂

ベトナムにはお風呂はありません。基本、シャワー、しかも水のシャワーです。暑いから。しかも、毎日は体を洗わないようです。実習生の子も髪にいっぱいフケがついていることがよくあります。働き始めたばかりの時は、ちょっとにおうこともありました。これだけは直した方がいいかな。日本で生活するなら、毎日お風呂にはいる習慣を身に付けるべきです。もっとも、光熱費を節約する目的もあってあまりシャワーを使わない実習生もいるかもしれません。LaQuaとか温泉に連れていってあげた子は「温泉好き」になってくれましたが、基本的にベトナム人は銭湯などの公衆浴場には行きたがりません。人前で裸になってお湯に浸かることには抵抗があるみたいです。

お金

お金に対してはストレートに話題にする感じです。単純にお金持ちイコール良いこと。技能実習生が高いリスクを負ってまで日本に来るのは、お金を稼ぐためなのです。食費を削ってでも毎月貯金して故郷に仕送りしていたりします。技能実習生ではないですが、新大久保あたりでお店をもって普通にお金を稼いでいるベトナムの人もいました。なんにせよ、ベトナム人はハングリーでたくましい。

オノマトペ

日本語の擬態語は伝わりにくい。

「さっさと」「ピシッと」「テキパキと」「どんどん」これらは全部、伝わりません。指示を出すときは具体的に、分かりやすい日本語で伝えましょう。

まとめ

衣食足りて礼節を知る、という言葉があります。日本で犯罪をおかすベトナム人たちの多くは職場で不当な扱いを受けたり生活に困窮していたりするのではないでしょうか?

私の職場で働く彼等は素直で働き者で、優しい良い人たちです。特別扱いをする必要はないと思います。日本人のスタッフと同じように扱うこと(給料や休日も含めて)。ひとりの人間として尊重すること。指導するこちらも熱意をもって接すること。そうすれば彼等はちゃんと応えてくれるでしょう。

ベトナム人の中にも悪い事をするベトナム人はいます。しかし、それを当のベトナム人技能実習生自身が「あれはベトナム人。ベトナム人、悪い人多い。私はやらないけど」と嘆いていました。ベトナム人が悪いのではない。良いベトナム人もいるし悪いベトナム人もいるのです。日本人の中にも犯罪をおかす人がいるのと同じです。

技能実習生を受け入れるにあたって、私は、せっかく日本に来てくれたのだから、日本を好きになって帰ってもらいたいと考えました。それが将来の介護業界や日本とベトナムの関係を良くすることにつながる。そう信じています。

ベトナム人は合理的な思考をします。根性論ではなく、理由や根拠を丁寧に説明してあげれば彼等は納得します。

ベトナム人は素直で正直です。そして取り繕うことが苦手です。けっして反抗しているわけではありません。そこを悪くとらないであげてください。

それでは今回はこの辺で。また記事を更新しますのでお待ちくださいね(*´∀`)♪

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