ささやき(informations)

No Brilliant Jerks.

「どんなに優秀で成果を上げていても、嫌な奴は許さない」

仕事はできるが態度が横柄で、周囲を萎縮させる「ブリリアントジャーク(優秀だけど嫌な奴)」。職場環境に悪影響を与えているにもかかわらず、多くの企業は「彼らは結果を出しているから」という理由で見て見ぬふりをし、結果として他の優秀な人材が流出していく。


働く中で誰もが味わう「理不尽」を「理論」で明快に解き明かしたビジネス書『理不尽仕事論 「クソが!!」と思った時に読む本』の著者であり、年間2000人ものビジネスパーソンと向き合っている人材育成のプロ・坂井風太さんに、組織を破壊するこの「ブリリアントジャーク」という存在について、詳しく話を聞きました。


 直訳すると「優秀だけど嫌な奴」です。米国のNetflix社のカルチャーデック(企業が自社の理念や文化を示すためにまとめたドキュメント)でも“No Brilliant Jerks.”と掲げられており、「どんなに優秀で成果を上げていても、嫌な奴は許さない」という方針が示されています。
 私自身も日々色々な会社を見ている中で、この「ブリリアントジャーク」の問題は大きいと感じます。明らかに社内で横暴なコミュニケーションを取っている人がいて、彼らが会議に1人いるだけで、周りのメンバーは極度に気を遣い、萎縮してしまって誰も何も言えなくなる。にもかかわらず、彼らはなかなか外されない。

 さらに恐ろしいのは、ブリリアントジャークが「再生産」される構造です。彼らがいる部署では、他人の気持ちを繊細に考えるような優しい人は、その横暴さに耐えられずにどんどん辞めていきます。その結果、彼らの態度に耐性のある人、あるいは同じような価値観を持つ部下だけが残り、その部下もまたブリリアントジャークになって悪しき文化が継承されるのです。
それは上長やその上の経営陣が「この人を外したらプロジェクトが止まるのではないか」「売上が下がるのではないか」という懸念を抱き、彼らの横暴な振る舞いを放任・黙認してしまうからです。「結果さえ出せばいい」「結果を出している人間が偉い」という価値観に染まった会社では、上司でさえも彼らに意見できなくなってしまうんです。


 そもそも「ジャーク」な時点で優秀なのか?と疑問に思いますけどね。企業が設定している「優秀さ」の定義が狭すぎるんですよ。実際のところ、スーパースターを採用するより、有害な行動を取る人物の登用や昇進を1名回避するだけで、業績が2倍上がるという研究結果もあります。だから本当は彼らを外した方が事業は伸びるかもしれないのに、実際には忖度して外せない企業が多すぎるのです。


 同僚や部下の立場で彼らを改心させようとするのは、基本的には無理だと思った方がいいです。証拠を押さえて、人事やさらに上の上司へ「通報」してください。ただ、その訴えかけ方が非常に重要です。絶対に「あの人がいると売上が下がります」といった「損得」を基準にしてはいけません。損得で考えると、経営陣は「でも、今は彼を外さない方が業績的に安全だ」と判断してしまいます。そうではなくて、「善悪」や「美徳」で潰しに行くんです。「我が社は理念として『誠実性』を掲げていますが、誠実性を欠いた行動を繰り返す人を重用するのは、会社として正しい判断なのでしょうか?」と、企業の価値観に直接問いかけるのです。忖度抜きで、そこを突かないと事態は動きません。


 もう「メタ認知がバグっている人」というのが存在するんです。周りの人が困っている様子が見えておらず、自分が間違っていると一切認められない人。こういう人は、誰の意見も聞き入れないので、もうマネージャーにしてはいけません。そういう場合は、評価を落とすなりマネージャーから外すなり、「ナタを振るう」しかありません。「あなたはマネージャーには向いていなかったから、専門職としてやってください」と言ってあげればいいんです。多くの企業の問題は、この「外すべき人を外す」という勇気がないことだと思っています。

 本当に事業を成功させたいがためにブリリアントジャークな振る舞いをしている人は、自分を再解釈して「私の行動は間違っていました。ごめんなさい」と言えるのですが、自分をメタで捉え直すことが全くできない人もいる。そういった“真正のブリリアントジャーク”はマネージャーにしてはいけないですよね。

 根本的な経営哲学として、「誠実性」を中心に置くことです。「ノブレス・オブリージュ(社会的地位の高い者にはそれに伴って果たすべき責任があるとする考え方)」や、権力は他者のために使われるべきだという「公的権力観」を持つ人間がトップにいること。「自分の話を通したいから権力を持ちたい」と考えるような「私的権力観」を持つ人間をリーダーに選んではいけません。そして、誠実性を逸脱した行動を取ったなら、たとえそれが社長であっても注意されるような会社が本当にまともな会社です。

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