「フォトボイス」とは
「フォトボイス」は、写真と「声(メッセージ)」を組み合わせて、人々の経験や社会課題を表現し、発信する参加型の手法です。特に、社会的に発言力が弱い立場の人々が、自らの視点や思いを社会に伝え、社会変革を促すことを目的としています。
フォトボイスの目的
フォトボイスの主な目的は以下の通りです。
1)参加者のエンパワーメント: 参加者自身がカメラを手に写真を撮影し、その写真について語ることで、自分の経験や視点を主体的に表現する力を養います。
2)課題の可視化と共有: 写真を通じて、普段は見過ごされがちな問題や、言葉だけでは伝えにくい心情などを視覚的に表現し、共有することで、深い洞察を促します。
3)社会への提言と変革の促進: 参加者の写真と「声」を社会に発信することで、重要な問題についての対話を促進し、政策に影響を与え、前向きな社会変革を促すことを目指します。
4)心理的ケアと回復: 災害や困難な経験をした人々が、写真を撮り、語り合うことで、喪失の痛みや苦しみと向き合い、経験を整理し、回復していくプロセスをサポートする役割も果たします。
フォトボイスのやり方
フォトボイスは、一般的に以下のようなプロセスで進められます。
1)カメラの配布と撮影: 参加者にカメラが配布され、自分の生活や経験、強調したい問題を表す画像を自由に撮影してもらいます。
2)グループでの語り合い: 撮影された写真を持ち寄り、ファシリテーターの進行のもと、少人数のグループで写真について語り合います。なぜその写真を撮ったのか、写真に何を伝えたいのかなどを話し合います。他のメンバーの視点に触れることで、新たな気づきが生まれることもあります。
3)「声(メッセージ)」の作成: 語り合いを通して、写真と共に伝えたいメッセージ(「声」)を作成します。写真だけでは伝えきれないこと、言葉だけでは表現しにくいことを、写真と「声」を一体として表現します。
4)発表・展示・発信: 作成された写真と「声」を、展示会や報告会、冊子、ウェブサイトなどを通じて社会に発信します。これにより、より多くの人々に参加者の視点や課題を伝えます。
具体的な活用例
日本では、東日本大震災で被災した女性たちが、写真と「声」を通して被災経験を記録・発信する活動が活発に行われています。これは、被災の痛みやグリーフからの回復、そして防災・減災、災害対応、復興に向けた提言を目的としています。
このように、フォトボイスは、個人的な経験を社会的な視点と結びつけ、より良い社会を築くための強力なツールとなり得る手法です。
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