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徒花団 『嘘を数える』(2.18改訂版)

徒花団 『嘘を数える』(2.18改訂版)

旅館西郊の外観2007年時
旅館の一室が舞台の芝居を本物の旅館の客室に観客を入れて上演するという斬新な舞台だった

2007.2.17 旅館西郊 開演 17:00

一部改訂

「嘘を数える」の初日を観た。

舞台効果を考えて開演時間をずらしたとのことだが、あいにくの雨

古びた旅館の一室
ふすまの向こうから漏れる明かりとTVの音
手前の暗がり
机に突っ伏している男が一人
音楽が高まっていき・・・・・・

「東京さ、魔物が居るんかね」

ネオン管技師に憧れて上京してきた兄と
結婚を間近に控え、浮き立っている妹
しかし兄の抱いていた夢は早くも断絶の宣告を受ける
兄の思い出の中とは別人のような叔父の言葉によって
そして実感を増しつつある妹との別離

思い出の中の幸福な過去と、それと相いれない現在
理想の自分とそうはなれない現実の自分
それは誰が悪いのでもなく
自分の弱さを責めたくもなく

思い出に根差し
思い出でつながった
でも
気持ちも肉体も離れてゆく家族
兄はこんなに気持ち悪いだろう
でもやっぱり妹の知っている兄なのだと

これは家族の物語である

兄の中で
変化のために危機に瀕した
家族との関係性、絆
そういったものが
かたちをかえ
美しく優しい幻想を失ってなお
関係性として再確認される
再建される家族の絆の物語

それが果たされたとき
兄の、この旅における「東京」は
その役を終える
何かが変わる
そんな思いを抱かせる

「帰る。中央線に乗る。東京の真ん中を、つっきってくるよ」

具体的にどこがとは言えないが
これまで観てきた(といっても罠のわななき~からだが)
徒花とはちょっと違う感じがする舞台だった

(笑いの要素は増えた。観客を意識した? それがいいかは別として)

ふすまの奥と手前で空間を区切ってたのが
テレビのオン、オフが
携帯の着信と会話の使い方、
ラストの「おにいちゃん?」とそのあとの恋人との会話になって去っていくとこが

印象的だった

今回、席はゆったりみれてよかった

自分は出演者の知人でもなんでもないので
まあ観客の中では少数派なのかもね

私は小難しくて、わかりにくくて、怖い徒花の芝居も大好きである
徒花の芝居は、もしかしたら日本の最先端かもしれないと思っている
次回も観にいきたいと思う。

※以前書いた観劇の記録から

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