ささやき(informations)

「あの雲、地震雲じゃない?」――地震予知はどこまで本当なのか。科学的に調べてみた

「あの雲、地震雲じゃない?」――地震予知はどこまで本当なのか。科学的に調べてみた

空を見上げて、妙に細長い雲や、放射状に広がる不思議な雲を見つけたとき、

「……これ、地震雲じゃない?」

そんなことを思った経験はありませんか?

SNSでも、ときどき「こんな雲が出ていた。大地震の前兆では?」という投稿が話題になります。

そして、その数日後に実際に地震が起きたりすると、

「やっぱり地震雲だったんだ!」

と思ってしまいます。

……なんともロマンのある話です。

もし本当に空を見れば地震を予知できるのなら、人類にとってものすごい発見です。天気予報を見るように「明日は地震に注意」と分かる日が来るかもしれません。

では、科学的にはどうなのでしょうか。

結論から言うと「地震雲で地震を予知できる」という証拠はない

まず結論です。

現在の科学では、「この雲が出たから、○日以内にこの場所で大地震が起こる」と判断できるだけの科学的根拠はありません。

気象庁は、雲は大気の現象、地震は大地の現象であり、両者を結びつける科学的なメカニズムは説明されていないとしています。仮に「地震雲」というものが存在するとしても、どのような雲なのか、地震とどのような関係があるのかは、科学的には確立されていません。

日本地震学会も、地震と雲の関係を示す報告が過去に存在することは認めつつ、研究者の間では一般に「雲と地震との関係はない」と考えられている、と説明しています。

つまり、

「地震雲を見た=地震が来る」

とは言えないわけです。

でも「地震の前に変な雲を見た」という話は昔からある

ここが面白いところです。

地震の前に、普段とは違う雲を見たという証言自体は、昔からあります。

筋状、帯状、放射状、異様に長く伸びた雲など、いわゆる「地震雲」と呼ばれるものにはさまざまなタイプがあります。

しかし、ここにはちょっとした落とし穴があります。

例えば、

「昨日、変な雲を見た」

「今日、大きな地震が起きた」

となれば、「あの雲は地震の前兆だったのでは?」と思います。

ところが、

「昨日、変な雲を見た」

「何も起きなかった」

というケースは、あまり記憶に残りません。

これを科学では、ざっくり言えば**「当たった例だけが強く印象に残る」**という問題として考えます。

日本地震学会も、過去の「地震雲」の報告には、大地震の前にたまたま特徴的な雲を見たことで、両者を結びつけてしまったケースが多いのではないかと指摘しています。

そもそも日本では「地震が起きる」こと自体は珍しくない

さらに重要なのがこれです。

日本では、地震そのものが珍しくありません。

気象庁によれば、震度1以上を観測する地震は、日本で年間およそ2,000回程度。平均すると1日に約5回も発生しています。

つまり、

「不思議な雲を見た」

「数日以内に地震が起きた」

という組み合わせは、思っているほど奇跡的ではありません。

空には毎日のようにさまざまな雲が現れ、日本では毎日のように地震が起きています。

この2つが偶然近いタイミングで発生することは、当然あり得るわけです。

「地震予知」そのものはどうなのか?

では、雲ではなく、地震そのものの予知はどうでしょう。

実は、こちらもまだ難しいのです。

科学的な意味での「地震予知」とは、単に「近いうちに地震が起こるかもしれない」という話ではありません。

いつ、どこで、どのくらいの規模の地震が起こるのか。

この3つを精度よく絞り込むことが必要です。

気象庁は、現在の科学的知見では、このような精度の高い地震予知は難しいと説明しています。

アメリカ地質調査所(USGS)も同様で、これまで科学者が大地震を確実に予知した例はなく、現在できるのは特定地域について「何年間のうちに地震が起こる確率」を評価することだとしています。

ここは「科学って意外と地震に弱いんだな」と感じるところかもしれません。

では「地震予知研究」は無意味なのか?

もちろん、そんなことはありません。

地震の前に何らかの変化が起こらないか、という研究は現在も続いています。

地殻の変形、地震活動、地下水、電磁現象、ガスなど、さまざまな観測が研究対象になってきました。

ただし、「何か異常が観測された」ことと、「それが地震の前兆である」ことは別問題です。

たとえば、ある異常が観測されたあとに地震が起きたとしても、

「異常があった→必ず地震が起きる」

のでなければ、実用的な予知にはなりません。

逆に、異常がなかったのに地震が起こる場合も考えなければなりません。

気象庁も、地震予知の方法を評価するには、予兆があって地震が起きたケースだけではなく、予兆があったのに地震が起きなかったケースなども含めて検証する必要があると説明しています。

それでも「地震雲」がちょっと気になる理由

とはいえ、個人的には「地震雲なんて完全にくだらない」と切り捨ててしまうのも、少し味気ない気がします。

空を見上げて、

「なんだ、この雲?」

と思う。

そして、

「もしかして地震の前兆だったりして?」

と想像する。

これは、科学とは別の意味で、なかなか楽しいことではないでしょうか。

実際、現在の科学では「地震雲」が地震を予知するという証拠はありません。

しかし科学は、

「今のところ証明されていない」

ことと、

「未来永劫、絶対に存在しない」

ことを同じ意味にはしません。

だからこそ研究が続くわけです。

ただし、現時点では「地震雲を見たから避難する」という判断をする科学的根拠はありません。

「地震雲を見たら、防災を思い出す」くらいがちょうどいい

結局のところ、地震雲を見つけたときの一番いい楽しみ方は、

「おお、すごい雲だ。……本当に地震雲だったらロマンがあるな」

くらいなのかもしれません。

そして、そのついでに、

「そういえば非常食の期限、大丈夫かな?」

「スマホのモバイルバッテリー充電しておこう」

「家具の転倒防止、ちゃんとできていたっけ?」

と思い出せば、それはそれで立派な防災です。

地震の日時・場所・規模を指定するような予知は、現在の科学では困難です。日本地震学会も、特定の日を指定した地震予測には科学的根拠がないとしています。

地震雲は、今のところ「予知の道具」ではありません。

でも、空を見上げるきっかけにはなる。

そして、その空を見ながら「もし本当に地震を予知できたら……」と想像する。

科学的には慎重に。

でも、ロマンは少しだけ残しておく。

そのくらいの距離感で「地震雲」を楽しむのが、いちばん良いのかもしれません。

-ささやき(informations)
-, , , , ,