眠狂四郎は忍者並みの身体能力を持った侍である
作中では2間くらいは平気で跳ぶ。縦にも跳ぶ。塀や木の枝のうえにも簡単に乗ってしまう。歩くのも速い。夜でもものが見える。足音がしない。そして馬並みである(かどうかは定かではない)。そんな眠狂四郎のアクションはメートル法ではなく尺貫法で活写されている。彼の活躍をより楽しむために、ひとつ、勉強してみようじゃないか。

江戸時代の長さ・距離・広さの単位一覧|一尺・一間・一町・一里は何メートル?
時代小説を読んでいると、「一尺の刀」「間口三間の店」「十町先の宿場」「五反の田畑」といった表現が登場します。
言葉の意味は何となくわかっても、実際にどれほどの長さや広さなのか、すぐに想像できるでしょうか。
江戸時代には、現代のメートル法とは異なる単位体系が使われていました。長さには「尺」「間」「町」「里」、土地の広さには「坪」「畝」「反」「町」などが用いられています。
この記事では、特に江戸時代を舞台にした時代小説を読む際に知っておきたい長さ・距離・面積の単位について、それぞれの関係と現代のメートル法への換算をわかりやすく解説します。
1.まず覚えたい長さ・距離の単位
最初に、長さや距離を表す代表的な単位を確認しましょう。現代の一般的な換算値では、次のようになります。
| 単位 | 相互の関係 | メートル法での換算 |
|---|---|---|
| 分(ぶ) | 1寸の10分の1 | 約3.03mm |
| 寸(すん) | 1尺の10分の1 | 約3.03cm |
| 尺(しゃく) | 基準となる長さ | 約30.3cm |
| 丈(じょう) | 10尺 | 約3.03m |
| 間(けん) | 6尺 | 約1.82m |
| 町(ちょう) | 60間 | 約109.1m |
| 里(り) | 36町 | 約3.93km |
※上表は、一般的な尺貫法の換算関係に基づいています。江戸時代の実際の運用や、特定の用途に使われた物差しが、すべて同じだったという意味ではありません。
2.一尺は約30センチメートル
「尺(しゃく)」は、長さを表す基本的な単位です。現在の換算では、1尺は約30.3cmとなります。
おおむね30cmと考えればよいため、手元に30cm定規があると、時代小説に登場する寸法をイメージしやすくなります。
寸・分との関係
尺より小さな単位には、寸や分があります。
- 1尺=10寸
- 1寸=10分
- 1寸=約3.03cm
- 1分=約3.03mm
たとえば、刀の寸法や傷の深さなど、細かな長さを表す場面で役立つ知識です。
なお、刀剣の長さを記す際の「寸」は、単純に現代のセンチメートルへ換算できる場合ばかりではありません。刀身の長さをどこからどこまで測るかという測定方法も、併せて確認する必要があります。
一尺と鯨尺は同じではない
着物や和裁の話題では「鯨尺(くじらじゃく)」という言葉も登場します。
一般的な尺(曲尺)1尺が約30.3cmなのに対し、鯨尺1尺は約37.9cmです。衣服の仕立てなどに用いられた別の物差しであり、同じ「尺」という名前でも長さが異なります。
時代小説で衣服や仕立ての寸法が問題になる場合には、どの尺を指しているのかに注意しましょう。
3.一間は約1.82メートル
「間(けん)」は、建物や土地の寸法を表すときによく使われる単位です。
1間は6尺、現代の単位では約1.82mです。
- 1間=6尺
- 1間=約1.82m
- 2間=約3.64m
- 3間=約5.45m
- 10間=約18.18m
たとえば、時代小説に「間口三間の小さな店」とあれば、店の正面の幅が約5.5mというイメージになります。
ただし、これは「間口」が建物の正面の幅を意味する場合の例です。奥行きや敷地全体の広さを示しているわけではありません。
建物の寸法で間が使われる理由
日本の伝統的な建築では、柱と柱の間隔や、部屋の寸法などに「間」が使われてきました。
そのため、時代小説で武家屋敷、町家、道場、寺社などの規模を想像する際に、一間の長さを知っておくと便利です。
なお、建築における「間」は、時代や建物、地域、設計上の基準によって実際の寸法が異なることがあります。常に約1.82mの柱間だったと断定することはできません。
4.一丈は約3メートル
「丈(じょう)」は、長さを表す単位で、1丈は10尺です。
- 1丈=10尺
- 1丈=約3.03m
- 2丈=約6.06m
長さの感覚としては、1丈は成人の身長のおよそ2倍弱に相当する規模です。
ただし、実際の身長との比較はあくまでも目安です。時代小説では、人物の身長や建物の高さ、物体の長さなど、文脈に応じて読み替えましょう。
5.一町は約109メートル
「町(ちょう)」は、距離を表す場合、1町=60間です。
現代の単位に換算すると、約109.1mとなります。
- 1町=60間
- 1町=360尺
- 1町=約109.1m
- 10町=約1.09km
たとえば「敵は三町先にいる」という表現なら、約327m先という距離感です。
現代の感覚では、徒歩で数分程度の距離です。見通しのよい場所なら相手の姿を確認できる可能性がありますが、実際に見えるかどうかは地形、建物、天候などによって変わります。
町は距離だけではない
ここで注意したいのが、「町」という漢字には、距離を表す用法と、土地の広さを表す用法があることです。
「五町先」とあれば距離を指すのが通常ですが、「五町歩の土地」とあれば面積を意味します。
同じ漢字が使われていても、単位の体系は異なります。後ほど面積の項目で詳しく説明します。
6.一里は約3.93キロメートル
「里(り)」は、比較的長い距離を表す単位です。
一般的な換算関係では、1里は36町。メートル法では約3.93kmとなります。
- 1里=36町
- 1里=2,160間
- 1里=約3.93km
- 2里=約7.85km
- 5里=約19.64km
- 10里=約39.27km
時代小説に「ここから一里の道のり」とあれば、まずは約4kmと考えると、距離をイメージしやすくなります。
一里は徒歩でどれくらいかかるのか
平地を歩く場合、時速4km程度で進むと仮定すれば、約3.93kmを進むのにおよそ1時間かかります。
ただし、これは現代的な歩行速度を用いた単純計算です。江戸時代の旅人の実際の所要時間は、道の状態、坂道、荷物、天候、休憩、関所や宿場での手続きなどによって変わります。
また、街道の里程表示、実際の道のり、地図上の直線距離は同じとは限りません。「一里」という数字だけで、旅の所要時間を厳密に決めることはできないのです。
7.長さの単位を一覧で整理する
ここまでの内容を、相互の関係とメートル法への換算でまとめます。
| 単位 | 上位単位との関係 | メートル法 | イメージ |
|---|---|---|---|
| 1分 | 1寸の10分の1 | 約3mm | 小さな寸法 |
| 1寸 | 1尺の10分の1 | 約3cm | 30cm定規の約10分の1 |
| 1尺 | 10寸 | 約30cm | 30cm定規ほど |
| 1丈 | 10尺 | 約3m | 乗用車の全長より少し長い程度 |
| 1間 | 6尺 | 約1.82m | 成人の身長ほどの長さ |
| 1町 | 60間 | 約109m | 陸上競技場の直線区間より長い距離 |
| 1里 | 36町 | 約3.93km | およそ4km |
※イメージ欄は大きさを直感的につかむための目安です。人物や物体の実際の寸法を保証するものではありません。
8.土地の広さを表す単位「坪・歩・畝・反・町歩」
ここからは、距離ではなく面積の単位です。
時代小説では、農民の田畑、武家屋敷、商家の敷地、寺社の所領などを表す際に、坪・畝・反・町といった単位が登場します。
面積の単位は、長さの単位と混同しないように覚えることが重要です。
| 単位 | 相互の関係 | 現代の面積 |
|---|---|---|
| 歩(ぶ) | 1坪と同じ面積 | 約3.306㎡ |
| 畝(せ) | 30歩 | 約99.17㎡ |
| 反(たん) | 10畝=300歩 | 約991.7㎡ |
| 町歩(ちょうぶ) | 10反=3,000歩 | 約9,917㎡ |
※「町歩」は、土地の面積を表す単位です。長さの「町」とは区別してください。
9.一坪は約3.3平方メートル
「坪(つぼ)」は、現在でも不動産や建築の分野で使われる面積の単位です。
1坪は約3.3058㎡。およそ畳2枚分の面積として説明されることがあります。
ただし、畳の大きさには地域や規格による違いがあるため、畳2枚と1坪が常に完全に一致するわけではありません。
江戸時代の町家や武家屋敷の広さを想像するときにも便利な単位ですが、土地の広さを坪数だけで表した場合には、建物の床面積なのか、敷地面積なのかを確認する必要があります。
10.一畝は約99平方メートル
「畝(せ)」は、土地の面積を表す単位です。
- 1畝=30歩
- 1畝=約99.17㎡
約100㎡と考えるとわかりやすいでしょう。
小規模な田畑の広さを考える際の目安になります。ただし、畝という単位が出てきたからといって、必ずしも田畑を指しているとは限りません。土地の種類は文脈から判断しましょう。
11.一反は約992平方メートル
「反(たん)」は、田畑の広さなどを表す際に用いられる単位です。
- 1反=10畝
- 1反=300歩
- 1反=約991.7㎡
約1,000㎡と考えると、おおよその規模をつかめます。
時代小説で「五反の田を耕す」といった描写があれば、現代の換算では約4,959㎡、つまり約0.50ヘクタールの土地を耕している計算になります。
ただし、土地の面積から農家の収入や生活水準まで推定するには、土地の生産力、作物、年貢、地域などの情報も必要です。面積だけで経済状況を断定することはできません。
12.一町歩は約9,917平方メートル
土地の面積を表す「町歩(ちょうぶ)」は、10反に相当します。
- 1町歩=10反
- 1町歩=100畝
- 1町歩=3,000歩
- 1町歩=約9,917㎡
約1ヘクタールと考えれば、面積をイメージしやすくなります。1ヘクタールは10,000㎡なので、1町歩はそれよりわずかに小さい面積です。
時代小説で「十町歩の土地」とあれば、約99,174㎡、つまり約9.92ヘクタールに相当します。
ただし、江戸時代の土地制度や検地に関する記述では、単位の換算だけでなく、石高や土地の評価方法も重要です。現代の面積に換算しただけでは、その土地の価値や収穫高までわかるわけではありません。
13.面積の単位を一覧で整理する
| 単位 | 上位単位との関係 | 平方メートル | ヘクタール |
|---|---|---|---|
| 1歩・1坪 | 基準となる面積 | 約3.306㎡ | 約0.000331ha |
| 1畝 | 30歩 | 約99.17㎡ | 約0.00992ha |
| 1反 | 10畝 | 約991.7㎡ | 約0.0992ha |
| 1町歩 | 10反 | 約9,917㎡ | 約0.9917ha |
14.同じ「町」でも距離と面積は違う
時代小説を読むうえで、特に間違えやすいのが「町」という単位です。
長さ・距離を表す町と、面積を表す町歩は、別々に理解する必要があります。
| 表現 | 意味 | 現代の単位での目安 |
|---|---|---|
| 一町先 | 距離 | 約109.1m |
| 三町の道のり | 距離 | 約327.3m |
| 一町歩の田畑 | 面積 | 約9,917㎡ |
| 五町歩の土地 | 面積 | 約49,587㎡ |
「町」という文字だけで判断せず、「先」「道のり」などの言葉があれば距離、「田畑」「土地」「町歩」などの言葉があれば面積を表している可能性が高い、と考えると読み違いを防げます。
15.時代小説での使用例と読み取り方
ここでは、単位の意味を理解するために、時代小説風の例文を挙げます。以下の文章は解説用に作成した例であり、実在する作品からの引用ではありません。
例1:「身の丈六尺の大男」
六尺は約1.82mです。
現代の感覚でもかなり背の高い人物としてイメージできます。ただし、「身の丈」がどのように測られているか、また作品内で誇張が含まれているかによって、厳密な解釈は変わります。
例2:「間口三間の小店」
三間は約5.45mです。
店の正面の幅が約5.5mあると考えれば、間口の広さを具体的に想像できます。なお、奥行きがわからなければ、店全体の面積までは求められません。
例3:「敵は二町先に見えた」
二町は約218mです。
相手までの距離が約200mあることになります。地形や視界が開けていれば姿を確認できる可能性はありますが、人物の細かな表情まで見えるような距離ではありません。
例4:「宿場まで一里半」
一里半は1.5里、現代の換算では約5.89kmです。
平地を時速4kmで歩くと仮定すれば、単純計算で約1時間半かかります。実際の旅では、道の状態や休憩などによって所要時間が変わります。
例5:「五反の田を持つ百姓」
五反は約4,959㎡、およそ0.50ヘクタールです。
田畑の規模を現代の面積で把握できます。ただし、その農家の収入や暮らし向きは、面積だけでは判断できません。
16.江戸時代の単位を読む際の注意点
ここまで紹介した換算値は、時代小説を読む際の基本的な目安になります。ただし、江戸時代の単位を理解するうえでは、次の点にも注意が必要です。
単位の運用は用途によって異なる
長さを測る物差しには、建築、裁縫など用途に応じた違いがありました。同じ「尺」という呼び方でも、すべての用途で同じ長さだったわけではありません。
距離の換算と実際の道のりは異なる
一里を約3.93kmと換算できても、街道の道のりや、旅人が実際に歩いた距離まで正確にわかるわけではありません。地図上の直線距離とも区別する必要があります。
土地の面積だけでは生産力はわからない
田畑の面積を現代の単位に換算しても、収穫量や年貢の額を直接求めることはできません。土地の評価や生産力については、当時の制度や地域事情も関係します。
現代の換算値をそのまま歴史上の実測値と考えない
この記事で紹介した数値は、一般的な尺貫法の換算値です。個別の史料や作品に登場する単位の意味を厳密に調べる場合は、その時代・地域・用途に応じた基準を確認する必要があります。
17.まとめ:これだけ覚えれば時代小説が読みやすくなる
江戸時代を舞台にした時代小説を読むなら、まずは次の数値を覚えておくと便利です。
- 1尺=約30.3cm:刀や物の長さを考える基本単位。
- 1間=約1.82m:建物や敷地の寸法を考える目安。
- 1町=約109m:近距離の道のりを考える単位。
- 1里=約3.93km:街道の距離や旅程を考える単位。
- 1坪=約3.306㎡:建物や敷地の面積を考える単位。
- 1反=約992㎡:田畑の広さを考える単位。
- 1町歩=約9,917㎡:広い土地の面積を考える単位。
特に重要なのは、長さ・距離の「町」と、土地の面積を表す「町歩」を区別することです。
単位の感覚が身につけば、登場人物がどれほどの距離を移動したのか、武家屋敷や町家がどの程度の規模なのか、農民がどれほどの田畑を持っているのかを、より具体的に想像できるようになります。
時代小説に登場する古い単位は、単なる難しい言葉ではありません。当時の人々の暮らしや、物事の大きさを理解するための手がかりでもあるのです。
参考資料
※換算値は資料に基づく概数です。歴史的な単位の運用は時代・地域・用途によって異なる場合があります。