町中でクマと遭遇した時に「使えそうな気がしてしまう」格闘技ベスト3
――理性が逃げた後に残るのは妄想である――
町中でクマと出会う。
それは日常という名の地面に、突然「野生」という名の落とし穴が開く瞬間である。交差点、コンビニ、住宅街。そんな場所で体長2メートル・体重200キロ超の存在感がこちらを見ていた場合、人は冷静な判断力を失い、なぜか**「自分が何か武道をやっていなかったか」**という記憶探索を始める。
本稿では、そんな錯乱状態の人間が頭の中で選びがちな「使えそうな格闘技」を、あくまでユーモアとしてランキング形式で紹介する。
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第3位 合気道
――「触れずに制する」という概念だけが先行する危険思想――
合気道は「力を使わず、相手の力を利用する」武道である。
この説明を聞いた瞬間、多くの人はこう思う。
> 「クマも力が強い。ならば、その力を“流せば”いいのでは?」
ここに、思考の飛躍が生じる。
使い方の妄想例
町内のゴミ集積所。クマが振り向いた瞬間、あなたは静かに構える。
「来ましたね……“気”が」
クマが一歩踏み出す。
あなたは半歩下がり、円を描くように手を出す。
――結果。
合気以前に、体格差という現実が牙をむく。
そもそも合気道は、人間同士の関節構造と心理反応を前提としている。
クマは「崩される」という概念をまだ履修していない。
それでも第3位に入る理由は、
「戦わずに済ませたい」という精神性だけは極めて正しいからである。
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第2位 相撲
――日本人のDNAが囁く「ワンチャンあるかもしれない」幻想――
クマといえば四つ足、重量級、押し合い。
ここで多くの日本人の脳裏に浮かぶのが相撲である。
> 「体格差? いや、相撲は“重心”だ」
この時点で、かなり追い込まれている。
使い方の妄想例
商店街の路地。
あなたは地面を踏みしめ、低く腰を落とす。
「はっけよい……」
クマが前脚を上げた瞬間、あなたは当たりに行く――つもりになる。
――結果。
押し相撲以前に、前脚の一振りで世界が回転する。
ただし相撲が第2位である理由は明確である。
それは、**「逃げ場がないと悟った時、人は最後に“押す”ことを選ぶ」**という、人類史的な本能に合致しているからだ。
勝てるとは一言も言っていない。
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第1位 空手(特に“精神論寄り”のやつ)
――技ではなく「覚悟」が先に立ち上がる――
堂々の第1位は空手である。
理由は単純明快。
> 「気合で何とかなる気が一瞬だけする」
この“一瞬”が、空手最大の魔力である。
使い方の妄想例
住宅街の公園。
クマとあなたの距離、約10メートル。
あなたは深く息を吸い、拳を握る。
「押忍……!」
意味は分からないが、口から出る。
なぜなら空手には、意味が分からなくても出る言葉が用意されているからだ。
一歩前に出る勇気。
二歩目は踏み出せない現実。
――結果。
気合はクマに伝わらないが、自分の心には少し効く。
空手が第1位である理由は、
**「戦闘力ゼロでも“覚悟だけは整う”」**という点に尽きる。
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結論
クマと遭遇した際に最も有効な格闘技は、
> 「何もしない」
「距離を取る」
「専門家に任せる」
である。
本ランキングは、人間が極限状態に陥った時、
いかに非合理な希望にすがるかを笑うためのものである。
どうか現実では、
格闘技ではなく、冷静さと情報と安全な退避をお選びいただきたい。
そしてもし本当にクマに遭遇したなら、
「この記事を思い出して笑える距離」にいることを、心より願っております。