徒花団 『鉢をかぶる』2004.12.2
2004.12.2 名曲喫茶ヴィオロン 開演20:00
「へえー。こんなとこあるんだぁ」
いとおしい。そして私にも世界は、こんなふうに見える。
東京で暮らす妹をたずねて上京してきた姉と、同棲していた男と別れた妹。
姉妹の愛情(愛憎)の素描。ままならない現実のにがさ、苦しさ。
ドンくさいと言うか、少しずれている姉。家(家族、父母)に縛られている姉。妹にもあまり歓迎されていない。うまく書けない。
「そんなだから大学も受からないのよ。会社だってあんなところしか入れないのよ。一人で外国旅行をする勇気もないくせに。結婚だってできないくせに。私はできないんじゃない、選んでるんだからね」
店を飛び出し、走る姉。
「さっき出てった男の人に何て言われたの?」
「走れって」
「え?」
「線路に沿って走れって言われた」
「走ってどこに行くつもりだったの」
「たぶん海だと思った」
「嘘・・・・・・」
「ううん、けっこう、本気で・・・・・・」
走ったことで、そしてやっぱり転んだことで、姉の心の中に何かが起こったのかなあ。ポイントをずらすことの妙、というか、型にはまらない、リアルなぎこちなさ。
題名の鉢をかぶるって、どういう意味だろう。お鉢が回ってくる、鉢かずき、なんかを連想したけど。「母の臨終を看取る役を引き受けること」かな。
徒花団の芝居ってあとからじわじわ効いてくる。普段は気付かないフリをして胸の奥にしまいこんでいる「心の振れ」が描かれていると思う。
本物の喫茶店の店内をそのまま舞台にしたのも面白かった。他の観客と必要以上に接近しすぎるのと、あと若干見づらい(首が疲れた)のがちょっとナンだったけど。外に走り出ていく演技があったから、通りすがりの人がなんだろうと見ていたりした。お客かと思ったら出演者だったり(まあ、はじめから奥の席に座ってたから、ただの客じゃないだろうなとは思ったけどね)。
今回は1時間ちょうどくらいの舞台。でもちょっと物足りなかったのは時間だけのせいじゃないかも。
もしかしてパワーダウンした?
それでも、次の公演も観にいきたい。というか観にいく気まんまんだけどね。
文中の台詞はうろ覚えなので実際とはちょっと違うかも。まあ、気にいしないで。
(徒花団の芝居の戯曲あったら是非欲しいんだけどなあ・・・・・・。)
記念にマッチをもらってきた。
PS 最近、彼女は自分が自分以外の何者でもなく、自分以外の何者にもなれないのだ、ということを再確認した(させられた)のだ、と思った。
解説
もともと徒花の芝居を観るきっかけになったのは、石川油氏の演劇ユニット「罠」の芝居を観たことだった。こちらもなんとも消化するのにパワーのいる、不条理なストーリーだったのだが、やはりそのパワーに惹かれたのだ。その芝居には甲斐氏も出演していた。
ほんとに、芝居じゃなくてリアルな姉妹の喧嘩を隣の席で目撃しているような感覚のお芝居なのだった。